こんにちは。
あすはな先生代表の村中です。
 
それにしても今年の夏は暑かったですね。ようやく猛暑から解放され、ほっとします。
季節の変わり目になりますので、どうぞみなさんお体労わってくださいね。
 
さて、少し間が空いてしまいましたが、
統計から見る発達障害の子どもたちの第二弾をお送りしたいと思います。
 
 
【10年前の調査との比較】
 
前回はH24年の文部科学省の調査である
 
『通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする
 児童生徒に関する調査結果について』
 
の概要をお伝えしました。
 
実は文部科学省は今回の調査のちょうど10年前のH14年にも
今回の調査と同様の調査を行っています。
 
今回は10年前の調査結果と最新調査結果の比較をお伝えしたいと思います。
 
10年前の調査の正式名称は
『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査』
です。
 
最新の調査と比較すると「発達障害の可能性」という言葉が使われていない点が違いますが、
調査の目的や手法はほぼ同じです。つまり中身はほぼ一緒なのです。
このことから10年前の調査も発達障害を念頭においた調査であったと考えられます。
 
発達障害という言葉を使用しなかった理由についてはっきりとしたことはわかりませんが、
おそらく10年前は発達障害という言葉がまだ一般的でなかったことへの配慮なのでは
ないかと推測されます。その辺りにも時の流れを感じられますね。
 
10年前の調査との比較で異なっている点がもう1つあります。
それは調査対象地域です。
 
10年前の調査では全国5地域(地域は特定されていません) が対象でしたが
今回の調査は全国調査(岩手、宮城、福島の3県を除く)となっており、より本格的な
調査となっています。
 
では調査結果を比較してみましょう。
 
 比較1
 
学習面又は行動面で著しい困難を示す子どもたちは、前回調査では6.3%でした。
今回の調査結果が6.5%ですので、0.2%の増加ということになります。
人数に換算すると全国で約2万名程度の増加ということになります。
 
0.2%、2万名の増加。
この数字、みなさんはどう感じられますでしょうか?
 
私はこの数字を最初に見たとき「思ったより(増加が)少なかったな」と感じました。
 
この10年間の間に学校教育現場では発達障害に関する、知識や理解が
かなり浸透してきた背景があり、学校の先生への調査であるこの統計はかなり
数字が伸びるのではないという予測が有力だったからです。
 
けれども冷静に考えると、2万人の増加という事実は”軽い”事実ではないと思うようになりました。
 
あすはな先生の生徒さんは現在ようやく100名(通算でも200名程度)を超えたところです。
(生徒さんの中には、発達障害以外のニーズのお子さんもおられるので実際はもっと少ないです)
 
そのことから考えると、約2万名の増加という事実の重さには目がくらむ思いがします。
 
 
人数の増加以外のポイントで気になった点をご紹介します。
 
下記のグラフをご覧ください。
 
比較2
 
 
これは、ADHD傾向と自閉傾向についての設問の比較です。
かなり興味深い数字となっています。
 
まず、『「不注意」の問題を著しく示す』子どもたちが大幅(1.6% 約16万人)に増加しています。
それに比して、『「多動性-衝動性」の問題を著しく示す』子どもたちは大幅(1.4% 約14万人)に減少しているのです。
 
前回の記事にも書きましたが、この「不注意」と「多動性ー衝動性」の要素はADHDの子どもたちの
特徴を表しています。ということは、この10年の間に「不注意優勢型」の子どもたちが急激に増え、「多動、衝動性型」の子どもたちが急激に減ったのでしょうか?
 
発達障害がうまれつきの障害であることを考えると、いくらなんでもそう解釈するのはちょっと無理があります。
 
私はこの事実を、ADHDの子どもたちに関する理解の急激な普及と現場の先生方の
努力の賜物の数字ではないかと考えています。
 
この調査が、「問題を著しく示す」子どもたちに関する統計であることを考えますと
現場の先生方の対応がニーズに対して適切であればあるほど、この数字は下がっていくことになります。
子どもたちは、特性を理解してもらえた対応を受けると問題行動が減るからです。
 
その意味で、「多動性-衝動性」の子どもたちの数字の減少は、現場の対応力の向上の
現れだと思います。お忙しい中でニーズに対応されておられる現場の先生方には頭の下がる思いです。
 
それでは、「不注意」の子どもたちの数字の上昇が説明できないと思われた方、するどい指摘です。
一方ではニーズへの対応力が上がり、一方では下がっているというのは奇妙ですよね。
 
ですが、これも現場の理解や対応力が上がったことが原因だと私は思っています。
もう少し説明しますと、「不注意型」の子どもたちのニーズに気づいてもらえるようになってきた
ということなのです。
 
不注意型の子どもたちは派手な問題行動は起こしませんので、かつてはニーズに
気づいてもらえず”放置”されていた現状がありました。
ですが、学習についていけない、周囲の状況についていけないなどの「困り感」は
存在していたのです。
 
そのことに現場の先生方が気づき始められ、それが統計に表れているのだと私は思います。
 
このように現場の先生方は頑張っておられますが、まだまだ困っている子どもたちはたくさんいます。
今後は、学校で行われている支援の実態についてお伝えしていきたいと思います。
 
<参考データ> 

H24年文部科学省の調査結果(PDF版)はこちら → 
H14年文部科科学省の調査結果はこちら → ☆