統計から見る発達障害の子どもたち③

2013年10月31日
こんにちは
あすはな先生代表の村中です。
 
今回は統計から見る発達障害の子どもたちの第三弾を
お送りしたいと思います。
 
今までの記事はこちら
統計から見る発達障害の子どもたち
統計から見る発達障害の子どもたち②
 
【子どもたちへの支援の実態】
今回は引き続きH24年の文部科学省の調査である
 
発達障害などのニーズのある子どもたちが、学校でどのような支援を受けているのかその実態について見ていきたいと思います。
 
まず、以下のグラフを見てください。
 ブロググラフ校内委員会 あすはな先生
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
これは今回の調査で知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面で著しい困難を示すとされた児童生徒(6.5%)が、学校の校内委員会で特別な教育的支援が必要と判断されていると認定を受けているかどうかについての調査結果です。
 
驚くべきことに、「支援の必要あり」とされている子どもたちは18.4%しかいないのです。この数字は全校児童の18.4%という意味ではありません。
担任教師によって「著しい困難がある」とされた子どもたちに対する数字なのです。
 
今回の調査は基本的に担任教諭によって受け持ち児童について回答しています。つまり、現場の教員の方が「特別なニーズがある」と感じる子どもたちのうち学校の仕組みとして支援対象になっているのはわずか2割足らずだということを意味しています。
残りの8割以上は学校の仕組みにおいて支援の対象と認められてないのです。
 
次に、支援が必要と認められた18.4%の子どもたちが現在具体的にどんな支援を受けているのかの内訳を見てみましょう。
 
 
 ブロググラフ あすはな先生
 
支援の内容として最も多いのは「授業時間内に教室内で個別の配慮・支援」となっていて70%以上の子どもたちが支援を受けています。その中身としては「座席位置の配慮、コミュニケーション上の配慮、習熟度別学習における配慮、個別の課題の工夫等」となっています。
 
次に多いのは「個別の学習支援計画の作成」(32.1%)「授業時間内に教室以外の場で個別の配慮・支援」(24.4%)となっていますが、数字的には大きな開きがあります。
 
このことから、支援の必要が認められた子どもたちへの配慮や支援は現場の先生たちの創意工夫に委ねられている部分が大きく、学校内でのしくみによる計画的支援にはまだまだ程遠い現状が読み取れます。
 
通常授業のなかで、特別なニーズのある子どもたちへの配慮に苦慮されている現場の先生方の現状がこの数字からもありありと浮かんできています。
 
今後は、計画的支援の実施や支援学級への通級、取り出し学習支援の実施など学校システムとしてのニーズのある子どもたちへの支援拡充が必要であるといえるでしょう。
 
その為には、教育は未来への投資であるということを強く認識する必要があると私は思っています。
 
あすはな先生でのたくさんの子どもたちとの取り組みの中で、小学校、中学校時代の特別なニーズある子どもたちへの支援の有無が、子どもたちの将来の可能性に大きな影響があることを私は確信しています。
 
よくない循環に入り込んでしまうことで、子どもたちがニートや引きこもり状態になってしまう可能性も悲しいことにあります。一方で適切な援助さえあれば個性や強みを伸ばし社会で活躍する可能性もあるのです。
 
多くの子どもたちが後者の未来を育めるそんな状況に一歩でも近づけるために、私たちあすはな先生も出来る限りのことをがんばりたいと思います。
 

統計から見る発達障害の子どもたち②

2013年08月29日
こんにちは。
あすはな先生代表の村中です。
 
それにしても今年の夏は暑かったですね。ようやく猛暑から解放され、ほっとします。
季節の変わり目になりますので、どうぞみなさんお体労わってくださいね。
 
さて、少し間が空いてしまいましたが、
統計から見る発達障害の子どもたちの第二弾をお送りしたいと思います。
 
 
【10年前の調査との比較】
 
前回はH24年の文部科学省の調査である
 
『通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする
 児童生徒に関する調査結果について』
 
の概要をお伝えしました。
 
実は文部科学省は今回の調査のちょうど10年前のH14年にも
今回の調査と同様の調査を行っています。
 
今回は10年前の調査結果と最新調査結果の比較をお伝えしたいと思います。
 
10年前の調査の正式名称は
『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査』
です。
 
最新の調査と比較すると「発達障害の可能性」という言葉が使われていない点が違いますが、
調査の目的や手法はほぼ同じです。つまり中身はほぼ一緒なのです。
このことから10年前の調査も発達障害を念頭においた調査であったと考えられます。
 
発達障害という言葉を使用しなかった理由についてはっきりとしたことはわかりませんが、
おそらく10年前は発達障害という言葉がまだ一般的でなかったことへの配慮なのでは
ないかと推測されます。その辺りにも時の流れを感じられますね。
 
10年前の調査との比較で異なっている点がもう1つあります。
それは調査対象地域です。
 
10年前の調査では全国5地域(地域は特定されていません) が対象でしたが
今回の調査は全国調査(岩手、宮城、福島の3県を除く)となっており、より本格的な
調査となっています。
 
では調査結果を比較してみましょう。
 
 比較1
 
学習面又は行動面で著しい困難を示す子どもたちは、前回調査では6.3%でした。
今回の調査結果が6.5%ですので、0.2%の増加ということになります。
人数に換算すると全国で約2万名程度の増加ということになります。
 
0.2%、2万名の増加。
この数字、みなさんはどう感じられますでしょうか?
 
私はこの数字を最初に見たとき「思ったより(増加が)少なかったな」と感じました。
 
この10年間の間に学校教育現場では発達障害に関する、知識や理解が
かなり浸透してきた背景があり、学校の先生への調査であるこの統計はかなり
数字が伸びるのではないという予測が有力だったからです。
 
けれども冷静に考えると、2万人の増加という事実は”軽い”事実ではないと思うようになりました。
 
あすはな先生の生徒さんは現在ようやく100名(通算でも200名程度)を超えたところです。
(生徒さんの中には、発達障害以外のニーズのお子さんもおられるので実際はもっと少ないです)
 
そのことから考えると、約2万名の増加という事実の重さには目がくらむ思いがします。
 
 
人数の増加以外のポイントで気になった点をご紹介します。
 
下記のグラフをご覧ください。
 
比較2
 
 
これは、ADHD傾向と自閉傾向についての設問の比較です。
かなり興味深い数字となっています。
 
まず、『「不注意」の問題を著しく示す』子どもたちが大幅(1.6% 約16万人)に増加しています。
それに比して、『「多動性-衝動性」の問題を著しく示す』子どもたちは大幅(1.4% 約14万人)に減少しているのです。
 
前回の記事にも書きましたが、この「不注意」と「多動性ー衝動性」の要素はADHDの子どもたちの
特徴を表しています。ということは、この10年の間に「不注意優勢型」の子どもたちが急激に増え、「多動、衝動性型」の子どもたちが急激に減ったのでしょうか?
 
発達障害がうまれつきの障害であることを考えると、いくらなんでもそう解釈するのはちょっと無理があります。
 
私はこの事実を、ADHDの子どもたちに関する理解の急激な普及と現場の先生方の
努力の賜物の数字ではないかと考えています。
 
この調査が、「問題を著しく示す」子どもたちに関する統計であることを考えますと
現場の先生方の対応がニーズに対して適切であればあるほど、この数字は下がっていくことになります。
子どもたちは、特性を理解してもらえた対応を受けると問題行動が減るからです。
 
その意味で、「多動性-衝動性」の子どもたちの数字の減少は、現場の対応力の向上の
現れだと思います。お忙しい中でニーズに対応されておられる現場の先生方には頭の下がる思いです。
 
それでは、「不注意」の子どもたちの数字の上昇が説明できないと思われた方、するどい指摘です。
一方ではニーズへの対応力が上がり、一方では下がっているというのは奇妙ですよね。
 
ですが、これも現場の理解や対応力が上がったことが原因だと私は思っています。
もう少し説明しますと、「不注意型」の子どもたちのニーズに気づいてもらえるようになってきた
ということなのです。
 
不注意型の子どもたちは派手な問題行動は起こしませんので、かつてはニーズに
気づいてもらえず”放置”されていた現状がありました。
ですが、学習についていけない、周囲の状況についていけないなどの「困り感」は
存在していたのです。
 
そのことに現場の先生方が気づき始められ、それが統計に表れているのだと私は思います。
 
このように現場の先生方は頑張っておられますが、まだまだ困っている子どもたちはたくさんいます。
今後は、学校で行われている支援の実態についてお伝えしていきたいと思います。
 
<参考データ> 

H24年文部科学省の調査結果(PDF版)はこちら → 
H14年文部科科学省の調査結果はこちら → ☆
 

 

統計から見る発達障害の子どもたち

2013年07月09日
こんにちは。あすはな先生代表の村中です。
毎日暑いですね。今週は高温注意報も発令されています。
みなさん、熱中症等に十分気をつけてくださいね。
 
さて今回は、統計から見る発達障害の子どもたちと題してマクロな視点で
子どもたちの現状についてお伝えしたいと思います。
 
 
【発達障害に関する統計について】
発達障害に関する全国的な統計調査は実はあまり多くありません。
その為、発達障害の実態についてはまだまだよくわかっていない事が多いのです。
 
なぜ統計調査が多くないのかについては大きく2つの側面があります。
 
 
①発達障害に対応する障害者手帳が存在しない
②発達障害を正確に診断できる医師が不足している
 
①について
現在我が国では「身体障害」「知的障害」「精神障害」の3つの障害については
それに対応する障害者手帳(もしくはそれに相当するもの)が存在しています。
しかしながら発達障害については、発達障害手帳なるものは存在していません
(発達障害の方が手帳を取得されようとする場合、「知的障害」もしくは
「精神障害」の手帳を代替的に取得するということになります。)
 
手帳が存在している場合、発行数や申請内容からかなり正確に統計的データが得られるのですが
発達障害の場合手帳が存在しないため正確な数字を把握しにくいという現状があるのです。
 
 
②について
発達障害の診断を求める人の数に対して、
診断の出来る専門性を持った医師が不足している現状があります。
 
(参考)
つなごう医療 中日メディカルサイト | 〈記者の眼〉 発達障害の専門医不足
 
発達障害児「専門医」養成 福井県、今年度から研修
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=79521
 
 
発達障害の方の人数を知ろうにも、そもそも「発達障害である」ことを
明確にすることが出来ていないというのが現実ということになります。
 
こういった現状のなかで、数少ない全国的で信頼のおけるデータとして
H24年に文部科科学省が行った、小中学生を対象とした調査があります。
 
多くの発達障害の報道で使われる「6.5%」という数字はこの調査の結果がその根拠となっています。
 
今回はこの調査の内容を紐解きながら、
あすはな先生でお預かりしている子どもたちの現状も交えながら、
発達障害の子どもたちの実情についてお伝えしていきたいと思います。
 
 
 
【H24年文部科科学省調査について】
 
調査の正式名称は
 
『通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする
 児童生徒に関する調査結果について』
 
となっています。
 
対象は『通常の学級に在籍する』子どもたち、つまり特別支援学校でない、
国民の大多数が通う公立小中学校に通う子どもたちです。
 
対象地域は全国(岩手、宮城、福島の3県を除く)で実効回答人数で、
52,272人という大規模な調査となっています。
 
その子どもたちを対象に
 
①学習面
 →「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」についての調査
②行動面
 →「不注意、多動性ー衝動性」と「対人関係やこだわり」の2側面についての調査
 
の2領域について大きな困難を示す子どもたちを調査しています。
 
その結果は以下となっています。
 
ニーズ内訳 
 
 
 
学習面又は行動面で著しい困難を示す子どもたちの割合は 6.5%、
人数にすると全国で約68万名※の子どもたちが大きな困難を示しているということになります。
 
※H24年学校基本調査より算定
 
ただし、この割合がそのまま発達障害の子どもたちの人数なのかというと一概にそうとは言えません。
なぜなら、この調査の調査方法上の限界があるからです。
 
この調査は、該当の子どもたちについての設問を「担任の先生」が回答したものを集計しています。
発達障害の専門家チームによる判断や、医師による診断によるものではないのです。
 
そのためあくまで、発達障害の“可能性”のある特別な教育的支援を必要とする
児童生徒の割合として認識する必要があります。
 
そのことを踏まえた上でもう少し中身について見てみましょう。
 
 
まず学習面についてです。
 
今回の調査は「知的発達に大きな遅れがないこと」が調査の前提となっています。
つまり学習面に困難があるとは、「知的発達に遅れがないにもかかわらず、
学習上の困難があり学力の獲得が難しい」ということを指します。
 
これは発達障害のサブカテゴリーである「LD(学習障害)」の子どもたちを
意識した調査であると思われます。
 
学習面の困難を抱えている子どもたちは4.5%ですので、
(広義の)学習障害のある子どもたちは20人に1人くらいの発生率と考えられます。
 
学習上の困難の内訳を見てみましょう。
 
学習上の困難内訳
 
最も困難が多いのが「読む」「書く」に関する困難となっています。
逆に一番少ないのが、「聞く」「話す」となっています。
 
このことから、聞いたり話たりすることは特に問題なく出来るのに、
読ませたり書かせたりすると極端に出来なくなる子どもたちが
たくさんいるということが分かります。
 
このことは、子どもたちの支援の現場の観点からすると重要な意味を持ちます。
 
聞く、話すなどの普段のコミュニケーションに困難がなく、
元気におしゃべるしている子どもたちが「読む」「書く」などの困難を持っている場合、
周囲の大人はそれを子どもたちの認知特性の問題としてではなく、
「不真面目」「努力不足」「甘え」といった「性格上の問題」と認識してしまう傾向があります。
 
つまり、子どもたちの『困難(ニーズ)が見えにくい』のです。
誤解をされてしまった子どもたちは、適切な対応をしてもらえません。
その結果として、ますます勉強を嫌いになっていくそんな悪循環が生まれてしまいます。
 
実際、あすはな先生でお預かりしている子どもたちの中にも、
学校や塾で「甘え」「こんな不真面目な子どもは初めてだ」などの心ない言葉を浴びせられ、
傷つかれた子どもたちや保護者の方が大勢おられます。
 
 
次に行動面について見てみましょう。
 
行動面は大きく
「不注意」「多動-衝動性」と、「対人関係やこだわり等」の2つの側面から調査がなされています。
 
質問項目の内容などから
「不注意」「多動-衝動性」の調査は、ADHD(注意欠陥多動性障)
「対人関係やこだわり等」の調査は、自閉症スペクトラム
の子どもたちを意識した調査であることが分かります。
 
行動面の困難を示す子どもたちの割合は3.6%ですので30名に1人程度の割合でいることになります。学校だとちょうど1クラスに1名といった感じです。
 
行動面の困難の内訳を見てみましょう
 
行動上の困難内訳
 
最も比率が高いのが「不注意」の問題です。
不注意の問題とは、
向けるべき対象に注意を向けたり物事に対して集中することに対する困難を指します。
 
不注意の課題は、例えば学校生活では
「先生の指示を聞き取れない」
「見るべきところに視線を向けず、関係ないところを見ている」
「(集団の中で)自分に言われていると気付けない」などの問題を引き起こします。
不注意の問題は何らかの大きなトラブルが起きない限り見過ごされてしまうことが多いことも特徴です。
 
実際には不注意の問題を抱えているにも関わらず、
本人の努力や意識の問題だとされてしまっていることも多く考えられ、
この数字以上の子どもたちがいる可能性も高いと思われます。
 
次に多いのは「多動性ー衝動性」の問題です。
多動性、衝動性の問題とは、落ち着きがなく身体をずっと動かしている状態や、
目の前のことに衝動的に行動してしまうような傾向を指します。
 
この課題を抱えていることどもたちは、待つことが難しかったり、
衝動的に暴力をふるってしまったりして友人とのトラブルが多くなる傾向があり、
学校などでは「問題児」とレッテルを貼られてしまうことがあります。
 
最も人数が少ないのが「対人関係やこだわり等」の問題です。
前述の通り、社会性の障害や、常同行為(同じ行動の繰り返し)などを特徴とする、
自閉症スペクトラムの子どもたちを意識した項目です。
少ないといっても人数にして約10万人の子どもたちが全国にいることになります。
自閉傾向のある子どもたちは、他者との関わりやコミュニケーションに
困難を抱えていることが多く学校の中で孤立してしまったり、
能力を実際よりも低く見積もられてしまったりしている恐れがあります。
 
 
【H24年文部科科学省調査から見えてくること】
6.5%、約15人に1人という数字、みなさんはどう感じられますでしょうか?
あすはな先生では、この数字を「重大な社会課題」だと感じています。
 
あすはな先生の生徒たちの中には、この6.5%にあたる子どもたちがたくさんいます。
そして多くの子どもたちが「深い傷つき体験」を持っています。
 
私は多くの子どもたちと接する中で、子どもたちの傷つき体験の多くは
「子どもたちの個々の特徴を周囲の大人が正しく理解することが難しい」
ことが原因となっていると感じています。
 
・上手に話せるけれど、書けない
・衝動性の課題のために、わざとじゃないのに手が出てしまう
・不注意の問題で自分に言われていると気付けない
・コミュニケーションが苦手だから、知的な能力まで遅れていると思われてしまう
 
これらのことすべてが、
子どもたちへの「怠け、性格の歪み、不真面目、低能力」といった誤解を生む温床となります。
発達障害の子どもたちは、通常私達が想定するよりはるかに得意と不得手の差が大きく、
また予想外の方法でこの世界を認識しています。
 
こういった子どもたちが大人になった時、
社会で活躍する大人となれるかどうかは学齢期の経験や体験に大きく左右されると私達は考えています。
 
保護者や学校、支援者など子どもたちに関わるすべての人達が、
子どもたちについての「正しい理解」を得るための方法を知ること。
そしてそれに基づく対応をすること。
そういったことが今まで以上に求められていることではないでしょうか。
 
 
以上、日本で数少ない発達障害に関する全国的な調査である、
文部科学省に調査結果概要を今回はお伝えしました。
 
次回は、10年前に行われた同様の調査との比較についてまとめてみたいと思います。
 
<参考データ> 
H24年文部科科学省の調査結果(PDF版)はこちら →