こんにちは。

あすはな先生代表の村中です。
 
今回は、オキシトシンホルモンによる治療薬研究についての続編を
お届けしたいと思います。
 
→前回の記事はこちらパソコン 自閉症最新研究について ~オキシトシンホルモンによる治療薬研究 その①~
 
 
 
前回もお伝えしましたが、オキシトシンホルモンの効果が実証されたこと自体は、
非常に注目すべき画期的研究結果だと思います。
 
しかしながら、このことをもって「自閉症が治療できるようになる」と
安易に結びつけることは、私は慎重に考えるべきではないかと思います。
 
そう考えられる理由として大きく2つあります。
 
理由の1つめは、「実際のコミュニケーション課題解決にどの程度役立つのかが
まだ不確実」であるということです。
 
 
今回の調査でオキシトシン投与により「数%の表情認知得点向上」が確認されています。
しかし「数%の表情認得点向上」が現実場面でのコミュニケーション課題解決に
どの程度影響するのかについてはまだ明確にはなっていません。
表情からの情報読み取りは確かに重要な要素ですが、その力が少し向上しても
現実場面でのコミュニケーショントラブルがどの程度減るかなどの、実際的効用については
今後の研究を待たなければいけないでしょう。
 
また、継続的効果があるのかについても明らかにはなっていません。
たとえオキシトシンに効果があってもそれがごく短時間しか効果がないのなら
実用性という観点でかなり限界があります。その為、研究では6週間の連続投与の
臨床実験を行われるそうですので、その結果が期待されます。
 
理由の2つめは「コミュニケーション課題以外の中核症状が適応外であること」です。
今回の実験の対象はあくまで、表情などのノンバーバル情報の読み取りが対象です。
その為、想像力の問題や過度のこだわりなどのよく知られている自閉症の他の中核症状に
ついてはその適応外である可能性が高いと思われます。
 
これらのことから、「自閉症の治療薬」が出来るのではないかという期待をすることは
現段階ではまだ「過度な期待」であると言えそうです。
 
ただし、「自閉症の治療薬」ではなく「自閉症の方が社会で生きていくうえでの困り感を
軽減してくれる薬」という見方をすれば今回の研究結果には大きな期待を寄せることが
出来るのではないかと私は考えています。
 
いずれにせよ、自閉症の方への支援に薬学的なアプローチの道が開けることは
支援の選択肢を広げることにつながることになります。
 
あすはな先生では今後も様々な研究の最新知見に注目しつつ、
子どもたちにとってよりよい支援を探求していきたいと考えています。